法話634

人の愛、願いで生きる

坂井町御油田・演仙寺前住職 多田淳政

人それぞれ

先だって、同窓会の名簿を見ました。小学校を卒業して六十年。五十人もいたクラスの連中が、三分の二以上も既にこの世の人でなく、残った者も、病床についていたり、他府県へ移住してほとんど会えない人もあり、クラス会を開いても集まれる者は六、七人もあるでしょうか。
同じ年に生まれ、同じ教室で学んだ者でも、その人生はそれぞれ違っています。否、同じ両親から生まれた兄弟でも、共白髪を誓った夫婦でも、その一生は全く人それぞれです。
しかし、一方から考えると、人の人生はみな別々でも、その心はみんな煩悩の起こし通り。自分のことしか考えない我欲の心を捨てきれず、それによって苦悩の一生を送らねばならないのは、みんな同じではないでしょうか。
しかもまた、この私たちは生まれ落ちてから、両親の慈愛の願いをかけられ、さらには有縁の人々の力によって生かされ、育てられてきたことも、みんな同じであり、平等であると言ってよいでしょうね。
これが人間の原点であり、この原点に立ち戻ることによって、どんなにつらい人生であっても、その中でおかげさまで生かされましたと、喜びと感謝の気持ちを味わえることが、人間最大の幸せでありましょう。
お念仏とは、そういう心であろうと思います。

法話634挿絵

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