法話595

花まつり㊤

福井市太田町・平乗寺住職 神埜慧淳

北陸の暗い空も、四月になれば明るくなります。そして、一年生の誕生するよい季節であります。考えますに、小学校・中学校・高校・大学・社会へと、これよりは長い道が続くのでありますが、小学一年生は無邪気に喜んでおりまして、それはそれは、靴音が弾んで、とてもかわいいのであります。
四月八日は花まつりであります。仏生会(ぶっしょうえ)・灌仏会(かんぶつえ)とも申しまして、釈尊のお生まれになった尊い日であります。ご誕生の伝説によりますと、母であらせられる摩耶夫人は出産の間近いのを知って、里帰りなさろうとご出立になり、途中、ルンビーニーの花園で急に産気づき、深紅の花咲く無憂樹の下で、安らかに太子をご出産なさったのであります。
カピラという小さな国の太子として、ご誕生になったのであります。今はネパール国の領土となっておらます。小国ではありますが、釈迦族はなかなかの名門であったようであります。不思議なことに、この太子は、産道からお生まれになったのではなく、摩耶夫人の右脇(わき)を破ってご出生なされた、と伝記はつたえているのであります。
この不思議の奇端は味わってみるべきだと思います。親と子の出会いは、科学的事実を超えるものがあり、まことに不思議なきずなで結ばれているといわねばなりません。科学的事実を否定するのではありませんが、右脇から生まれたと表現することにより、一層鮮明に親と子の”まことの姿”を物語っていると申せましょう。まことに親心から子は生まれ、明るく育つのであります。

法話595挿絵

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