法話534

釈尊のご誕生を祝福

福井市松本四丁目・千福寺副住職 高務哲量

花まつり(一)

花まつりは、二千数百年前のインドにおいて、釈尊がご誕生になられたことをお祝いする日です。現在のインド国境に近いネパール領ルンビニーが、そのご誕生の地であります。広々とした広野の中に記念堂が建てられ、その前には、お母様の摩耶夫人が沐(もく)浴されたという池が残っています。
お釈迦様は、正確には釈迦族という農耕民族国家の皇太子として生を受けられ、幼名をゴータマ・シッダルタと呼ばれました。この後、二十九歳にして、すべてを捨て、出家なされ三十五歳で正覚と成り仏陀となられましたが、釈迦族出身の尊いお方(聖者)という意味で、釈尊とお呼びするわけです。
仏伝によりますと、お生まれになって、すぐ自らの足で東西南北に七歩ずつ歩まれ、天と地を指し、「天上天下唯我独尊三界皆苦我当安之」と、声を発せられたとあります。東西南北に七歩ずつ歩まれたとは、後に悟りをひらかれ、仏陀となって、悩み苦しむ人々を導いてゆかれた釈尊は、ただの人であったはずがないと畏敬(いけい)の心をもって慕った仏弟子たちが、釈尊は生まれながら六道輪廻(りんね)の迷いを越えておられた方であるとして、象徴的に伝え残したのでしょう。
歴史を、国家を、そして民族を越えた人類の偉大な指導者のご誕生を、仏教徒はお祝いしてきました。日本においては、花御堂をしつらえ、その中に立たれた誕生仏に甘茶を注ぎます。現在のルンビニーでは、ネパール政府を中心に日本の建築家の丹下健三氏の設計による記念公園化が大規模に行われつつあります。

法話534挿絵

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