法話522

まず心に信を頂く(道宗、心得21ヵ条で示す)

東京・大東文化大学教授 五十嵐明宝

妙好人シリーズ

道宗は、蓮如上人が井波の瑞泉寺に出向された時には、どんな雪の日にも、聞法の座に必ずつらなりました。またその後、上人が京に帰って山科本願寺に住まわれるようになると、毎年何度か上洛し、しばらく滞在して、蓮如さまの常随の門弟となっていたようです。その間に、本願他力の肝要な点を詳しく聞いていたことでありましょう。
そして、北陸の門信徒に念仏往生の道を伝えようとしますが、簡単には受け取ってもらえず、蓮如上人から手紙に教えを書いてもらって持ち帰り、それを有縁の人々に見せては、如来大悲の教えを勧めました。ある時は、彼の妻のために、わざわざ京に上り、一通のお文(ふみ)を頂いてきたこともありました。
しかし、蓮如上人は道宗の願いをすぐ入れて、いつも簡単に「お文」を書いたのではありません。ある日のこと、道宗が上人に「お文」を書いてほしいと申し上げると、「文は落とすこともある。けれども、心に信をさえ、しっかり頂けば、落とすことはないであろう」と、真実の信心を法定(けつじょう)して、自然(じねん)に伝道することの尊さを教えられました。道宗の心得・二十一ヵ条には、まず信を得ることの重要さを重ねて示しているのです。

法話522挿絵

法話521 トップ 法話523