法話326

荷物みんな捨てて(煩悩を背負って歩む旅)

大野市伏石・常興寺住職 巌教也

仏法という鏡

あるお寺の掲示板で、私はこんな言葉に出会いました。それは…
『どんな大事なものでも 荷物はみんな捨てて下さい 自分のからだも捨てるんですよ
-三途の川の番人のことばをかく-』と。
小林一茶の俳句に「はだかにて生まれてきたに何不足」というのがありますし、種田山頭火は「捨て切れない荷物の重さ前うしろ」と詠みました。
私たちは、煩悩という名の荷物を背負うて、一生の旅を歩みつづける者でありましょう。その煩悩とは、どんなことにも決して満足することの出米ない、欲望の姿かもしれません。
同じ宗教といっても、商売繁盛・家内安全といったような「煩悩満足型」の教えもありますし、それとは逆に、きびしい「煩悩否定型」のものもあります。しかしそんな煩悩を転じて、真実にじかにふれる「煩悩転成型」とも言うべきおみのりが、親鸞聖人のお念仏の教えでありました。
ある先生は、
『仏法とは鉄砲の反対だ鉄砲は外を撃つものだが仏法は己の内を撃つものである』
と言われましたが、ナムアミダ仏の鏡に映し出されて、初めて知ることの出来た、たまわりたる信心の自覚と反省でありました。そして「世の中安穏なれ、仏法ひろまれ」と、現代社会に生きる念仏者の一人として、なにものにもさえぎられることのない、絶対自由の道でございました。

法話326挿絵

お酒について

大野市伏石・常興寺住職 巌教也

あるお寺の掲示板で、私はこんな言葉に出合いました。それは…
「はかなきは人間一生酒一升 あるかとすればやがて無きかな」
× × ×
旅先の路地の張り紙で読んだ「酒の無い国へ行きたし二日酔」つづいて「三日目に帰りたくなる酒の国」という言葉を、私は早速メモいたしました。
思わぬ場所で、人間の素顔を見る思いがしました。そこで「親の意見とカンせぬ酒は、すぐにキカぬがあとでキク」の歌を連想いたしました。
話は飛びますが、親鸞聖人がときおり、お孫さんの如信上人に語られた記録の「口伝鈔」という本の中に、亡くなった人の家族をとむらう親鷲聖人のお言葉として「酒はこれ亡憂の名あり、これを勧めて笑うほどに慰めて去るべし」というのがありますが、人の心を手のひらですくうような気くばり、心くばりを感じます。
そういえばあるビール会社で、まったく対照的なドイツ語で書かれた、こんな詩を読みました。それは…
人間を毒する最大の敵
それは酒なり
されど神はのたまえり
“汝の敵を愛せよ”と
ある作家は「酒を飲むのは次の三つの場合に限られる。一つ、うれしい時、二つ、悲しい時、三つ、その他の時」と。どうやら茶道、花道、剣道、さらには仏道などの道を求める意味合いからも、酒道も一つ加えてみたらと思いました。

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