法話318

真実との出会い(三)

坂井町御油田・演仙寺副住職 多田文樹

私には、お浄土が信じられないから、法話を聞いても、どうもふに落ちませんという方がおられるとします。しかし、それは考え方が逆ではないでしょうか。
お浄土を願わなければならない現実があるからこそ、お浄土を仰ぎながら、お浄土に向かって、一歩一歩生きてゆきたいのです。
なぜ、お浄土を願うのでしょうか。一つには、自分の力に限界があるからです。例えば、肉親にガンの方がおられたら、おわかりになると思います。本当のことを告げることさえできない。なんとかしてやりたいと思いながら、何もできない歯がゆさ。それに比べ、お浄土は悲しみを共有できる世界であります。

法話318挿絵

第二には、自分の過ちに対する責任の問題があります。私の周囲では、今まで何人かの友人が自殺していきました。友人としての私の接し方によっては、彼らを救い得たかもしれません。単に、仕方なかったんだと済ますのではなく、いつか、理解しあえる時があるとしたら、その時を大切に待ちたいのです。

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