法話281

偉大な若さに感銘(「教行信證」六巻の英訳も)

春江町千歩寺・順教寺前住職 中臣徳恵

鈴木大拙博士の日常生活について

聖路加看護大学長の日野原重明さんと「イースタンブッデスト」編集長の岡村美穂子さんとが、鈴木大拙博士の日常生活を語り合われたのを聴視しました。
岡村さんは、アメリカ二世として十五歳の時、鈴木博士がアメリカの大学で華厳哲学を講義さられた時から縁あって聴講した時、質問したのがきっかけとなって、その後秘書として博士の日常生活のことをよく知っておられる人。日野原さんは九十六歳まで長命せられた鈴木博士の最期までその保健についても接触せられて、晩年の先生のことをよく知っておられるので、二人の対話は、東洋哲学者として世界的に有名なばかりでなく、その日常の生活についても感銘すべきことが多々ありました。
東洋哲学を西洋にひろめられ、ことに禅を世界的にひろめられた先生は、常に現実を大切にせられ、前途に向かって努力をつづけ、金沢生まれで北国特有のねばり強い性格、その上好奇心をもって感激性の強い方、花を愛し、猫などの動物が好きな方でした。
先生が相手の悩みをきかれておられる時のひとみの美しさ、いつも若さを保たれ、ものを大切にせられ、いつも廃物を利用することを忘れず、釈尊のお経にある長息の深呼吸をせられ、かくして八十歳になられてから、親鸞聖人の教行信證六巻の英訳を十年間かかって成し遂げられるなど、偉大な若さは九十六歳の最後まで継続せられ、すべてにわたって育てることに力をつくされたのでありました。

法話281挿絵

この長距離ランナーとしての生涯の日常生活の優れたありさまが、報道されたのを今さら感銘をもって聴視したのでありました。

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