法話280

口もとに念仏もれる(み仏の大悲伝え聞かす)

春江町千歩寺・順教寺前住職 中臣徳恵

寝たきりの人たちを訪ねる

お釈迦さまのお誕生を祝う花まつりの甘茶と、わかりやすい釈尊の漫画のご本と、お菓子などを用意して、仏教婦人会の役員二人と共に近くの集落に動かれない寝たきりの方々を訪ねました。
AさんとBさんは、言語障害で何も言えない。CさんとDさんは、夫婦もろともベッドを並べてねている。おおかたは半身不随で片手をようやく動かすばかり。腰も立たない、脚はもちろん立てない、中には大きな声で泣き叫ぶあり、あるいは九十歳になるが近ごろ視力がほとんどなくなってしまったらしい。
Eさんは四日間大便がなく、それも十二時間前に薬をのませて時間がくると排便するが感覚を失うているとのこと。どなたも言いようのないお気の毒な方々ばかり。ほんとうに胸がしめつけられるようであります。
本人はもとより、その苦痛は付き添う家族の方々にかかっています。種々の都合があって、施設や病院へもゆけず家庭でこうして寝たきりの方々は、あちこちにその数おびただしいことと思われます。
この病苦に日々を耐えねばならぬ業縁をしばらくでも心安らかにと、それにはみ仏の大悲をお伝えするより外ない。お念仏にまかせ切る心、如来さまのご本願が、お念仏となって永遠に生かされる生命の尊さと、耳元に口よせて話す時、かすかなれど、ほほえみの顔、そして小さな声でお念仏がもれてくるのを感じました。

法話280挿絵

小さなびんに入んた甘茶の一滴も、せめてもの心のお布施と、三人はこうしての半日、この方々のおかげで心あたたまるありがたいご縁だったと感謝し合ったのでありました。

法話279 トップ 法話281