法話275

旅と人生

三方町佐古・常徳寺住職 今井慶信

先ごろテレビで日本に滞在中のある外国人が「旅」というテーマで”近ごろの日本人の旅は、海外旅行をはじめとして、国内旅行も団体旅行・集団旅行が多いが、本当の旅の味は、一人旅である。見知らぬ所へ一人旅すると、静かに自然の観察、自然との対話、あるいはまた、いろいろな人との出会い、あるいは事件などにも出合って、言いしれぬ旅の味がわかる”という意味のことを語っていました。
まさにそうでして、私自身も時々仕事の関係で、一人旅をしますが、いろいろな環境やいろいろな人に出会うことによって、平素ペッタリ家庭で過ごしている生き方と違った環境や習慣に出合うことによって、考え方や感じ方に非常に教えられることが多いわけです。
人生も旅と同じで、特に一人旅と同じで、お経の中にも「独生独死独去独来」とありますが、独り生まれ独り死にいく、だれもかわるものがない。金殿玉桜の家があってもともなわず、七珍万宝は蔵に満ちていても持っていけず、妻子けん属はともなわない独りぽっちであるのが本当の人生でありましょう。

法話275挿絵

そうした独りぼっちの人生を、どう大切に生くるかを考えた時、まずいろいろな人との出会いやいろいろな事件、問題に出合うことによって得難い人生の尊さ、ありがたさを感ずるのではないでしょうか。二度とない人生に、不思議にめぐりあった人や環境のご因縁を深く味わってみるところにすばらしい人生が感じられるのではないかと考えます。

法話274 トップ 法話276