法話241

いのちを大切に

永平寺町谷口・仏願寺住職 藤井尊乗

こんなことぐらいでなぜ自殺なんかするのだろう。このごろは小、中学生までが自殺する。自殺年齢の低下が問題になっています。またなんの理由もなしに衝動的な殺人がひん発しています。なぜこんなことになるのでしょうか。
便利で豊かな生活となってなんでも思いのままになるところから感謝する心を失い、併せて欲望をコントロールする訓練がなされていない。しかも人間の欲望は無限でありますから、たとえ九のものが与えられても残る一つを求めて狂奔する。その極端なあらわれが自殺や殺人ではないでしょうか。それにしてもこんなところまで発展するのは、いのちの大切さを忘れ人間らしい心を失っているからなのでしょう。
生きている虫や動物と接する機会が少なくなり、電池で動く動物のオモチヤが街にはんらんしています。ここでは子供たちのいのちに関する認識が自然とあいまいなものとなります。また老人との別居が常識化しています。したがって老病死を家族の中に体験する機会が次第になくなりつつあります。他人の死は自然現象としか受けとられず、きびしい実感がありません。

法話241挿絵

こんなところに問題の根があるように思われます。みんな恵みの中に生かされているかけがえのないいのちであります。すべてのいのちをいつくしみ、一瞬一瞬を感謝して生きることを教えなければならないと思われます。

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