法話136

道宗、寝ずに聴聞(蓮如上人により仏弟子に)

東京大東文化大学教授 五十嵐明宝

妙好人シリーズ

妙好人シリーズの最後として、今回は赤尾の道宗を取り上げたいと思います。
赤尾の道宗は蓮如上人によって真の仏弟子を育てられた人であります。終生、それに感謝して、例え蓮如上人が「近江の湖を一人で埋めよとおおせられても、かしこまりました、といって従うのでありましょう」と、絶対帰依の姿を示したのでありました。
しかし、彼の場合も、そこまで至るのには貴い機縁が仲だちになっておりました。道宗は武士の子として生まれ、幼名を弥七郎といいますが、四歳で母を失い、十三歳で父とも死別したのです。その彼が、筑紫の羅漢寺に行くと石の五百羅漢がおり、そこで父や母に似た羅漢さまに会えるだろう、という話を聞いて、筑紫を指して旅に出たのはそれから数年後のことでした。

法話136挿絵

ところが途中、越前の麻生津という所で夢を見て、夢に現れた僧から「亡き母に似た羅漢に会ったとて、しょせんは別れねばならない。今、京都に蓮如上人という偉い僧がいて、真実の親に会って再び別れることのない教えを説いている。そこに行ったらよかろう」と諭されました。道宗はその言葉に導かれて蓮如上人の所に行き、三日三晩、座も立たずに熱心に聴聞したといいます。

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