法話094

念仏人に伝えたい(煩悩静める救いの言葉)

乗誓寺住職 鎌数静雄

み仏様のおはたらき

有名な浅原才市さんのうたに、次のようなうたがあります。
「ここに不思議な声がする。南無阿弥陀仏の声がする。わしの心の森木の中に、囀(さえず)る声のおもしろさ。これを人にも伝えたい」
み仏様は、一人一人の信心となり、念仏となりきって、お浄土へ生まれしめて下さるのでありますが、今、才市さんは、このお救いを見事にうたいあげています。
「ここに不思議な声がする」とは、お念仏のことでしょう。お粗末な口から美しい仏のお声が出て下さるという事実に驚いています。
「心の森木」とは、煩悩の生活です。「囀る声」とは、ご信心のことであります。私はこの煩悩の生活を森木にたとえたところに頭が下がります。こんもりと茂った森は、暗さと、落葉と、風によって生ずる騒音とがあります。
私たちの日々は全く森と同じです。いつも暗さのために息詰まり、毎日煩悩の落葉がやみません。ささいなことに腹を立て、醜い言葉が飛び出しかねない危ない生活です。

img044.gif

才市さんは、そのお粗末な煩悩の生活のただ中に、美しい仏心(信心)がはたらき、み仏様が心の中にあらわれて下さることを鳥にたとえ、見事にうたいあげています。
今、私の上にも才市さんと同じく、たしかなみ仏様が、はたらいていて下さることを思えば、才市さんと同じく、この世界を一人でも多くの人々にお伝えしたいと思います。

法話093 トップ 法話095